20代後半から40歳頃までという、多くの女性が年齢による肌の変化を感じ始める時期。
そんな時期に重なることが多い妊娠・出産期間の肌トラブルには、このままこの肌質が定着するのではないかという不安を持つ人もいるのではないでしょうか。
妊娠によって起こりがちな肌トラブルの原因と、治るもの、治らないものについてみていきましょう。
妊娠中に肌トラブルが起こらない人はいない?!
妊娠中に起こる肌トラブルの多くは女性ホルモン「プロゲステロン」の働きによるものです。
美容雑誌などで「女性ホルモンを活性化させて美肌に」と言われるのは、このプロゲステロンではなく「エストロゲン」というホルモンで、生理前や妊娠中に働くのは「プロゲステロン」というホルモンなのです。
エストロゲンとプロゲステロンは、どちらも繁殖のために働きます。
エストロゲンは繁殖相手を探すためのホルモン、プロゲステロンは命を授かった母体を守るためのホルモンです。
繁殖相手を探す…つまり異性を引き付けるためのホルモンであるエストロゲンは、髪をつややかにし、肌にハリをもたせ、体を活発に動かせるようにします。
一方プロゲステロンは、エストロゲンが優位であったときには見た目に注がれていた栄養素を、体内の健康保持や外的から身を守るために使うよう働きます。
その防衛能力は非常に高く、プロゲステロンが働いている間は、基本的には風邪などもひきにくくなります。
でも、防衛能力の高いはずのプロゲステロンが働く妊娠期間中に、なぜほとんどの人が肌トラブルを起こしてしまうのか疑問ではありませんか?
これは敏感肌の基本的な原因である「免疫反応の過剰」によるものなのです。
肌トラブルを起こしやすい肌は、人より外敵刺激を受けやすい肌なのではなく、人より外的刺激に対して反応をしやすい肌なのです。(参考:敏感肌とは~敏感肌の基礎知識~)
外的刺激から身を守る能力が向上する妊娠中は、当然普段よりも外的刺激に反応しやすい肌になります。
そのため、どんなにホルモンバランスの良い人でも、妊娠中には肌トラブルが起こる可能性がグッと高まるのです。
妊娠中の肌トラブルを避ける方法
プロゲステロンは妊娠中、外的刺激を敏感に察知して守ります。
とは言えその正常範囲は守っている本体を傷つけない範囲のはずです。
妊娠して以来何ヶ月もずっとニキビができっぱなし、ちょっとしたことでも蕁麻疹が出てなかなか収まらないというのは、ぎゃくに母体を攻撃してしまっている証拠です。
これには2つの原因が考えられます。
ひとつは外的刺激が多い、または強いこと、もうひとつは自律神経のバランスが崩れていることです。
プロゲステロンが正常な範囲で働いていても、紫外線を浴び続けたり顔をごしごし洗うクセがあったりすると、プロゲステロンは防御反応をとり続けなければいけません。
また、女性ホルモンと隣り合う自律神経のバランスが崩れると、それがそのまま女性ホルモンの過剰分泌に影響することもあります。
自律神経は免疫反応をつかさどる神経でもあるので、バランスが崩れることによってプロゲステロンが望む以上の免疫作用を起こすことがあります。
外的刺激に対しては、肌に合ったUVケアをきっちりと行うこと、長風呂や強い成分の洗顔などで肌バリアを壊さないようにするなど、免疫反応が働く機会をできるだけ減らす必要があります。
自律神経のバランスを整えるのは何かひとつ改善するだけでは難しいでしょう。
敏感肌の人のスキンケア対策~敏感肌の基礎知識~を参考に、妊娠生活に無理のない範囲で気を付けていきましょう。
妊活中の肌もやっぱり不安定
妊娠中の女性ホルモンはプロゲステロンが優位になって肌荒れが起こるとお話ししましたが、このプロゲステロンは妊娠してから働き始める女性ホルモンではありません。
妊娠期間以外でプロゲステロンが優位になるのは排卵から次の生理が始まるまでの期間、いわゆる生理前です。
妊活をしている人の多くは、この期間の妊娠能力を上げるためのサプリメントを摂取したり、もっと積極的に妊活をしている人はプロゲステロン製剤を摂取している人もいるでしょう。
通常よりプロゲステロンが多く分泌されている状態では、当然生理前や妊娠中のような肌トラブルに見舞われることが考えられます。
きちんとケアすれば産後半年ほどで元通りに
妊娠中の肌のトラブルは、通常では考えられないような症状であったり、いつまでも症状が治まらないなど、もしかして肌質自体が妊娠によって変わってしまったのではないかと考える人も多いかもしれません。
ほとんどの場合それは徒労に終わるので安心しておいて大丈夫です。
ニキビや湿疹などの肌荒れの場合、産後半年から1年の間に少しづつ改善します。
授乳が続いている場合、ミルクで育てている場合より少し長引くことがあります。
乾燥肌や色素沈着の場合、対処によっては慢性化してしまうので、しっかりと外的刺激対策や自律神経のケアを続けましょう。
残念ながら完全には治らないのが、妊娠線です。
妊娠線は女性ホルモンが原因のトラブルではなく、物理的な肌への負担が原因となっています。
要するに、急に強く引っ張られたために、真皮やその皮下組織の一部が裂け、クレバスのようになっている状態です。
さらに、妊娠中はホルモンの働きによってターンオーバーが鈍くなるため、修復も遅れがちになります。
真皮は表皮と同じようにターンオーバーしていますが、すべての細胞が1巡するのは5年から6年。
適切に修復され、ケアしていても、1度妊娠線ができてしまえば5~6年はしっかりと残ってしまうことになります。
妊娠線を予防するには、体重管理とできる限り肌を柔軟に保つことが必要です。