敏感肌の人の中には、アトピーやアレルギーなど、特徴的な難治性皮膚疾患を持っている人が多くいます。
その中でも今話題になっているのが「乾癬」です。
アトピーなどと比べて、あまり耳慣れない病名ですが、その原因と特徴的な症状、代表的な治療法についてお話ししたいと思います。
乾癬の特徴的な症状と診断
皮膚炎の中でも、乾癬には特徴的な症状があり、診断も比較的簡単です。
乾癬は下記のような5つの症状があります。
・尋常性乾癬・・・輪郭のはっきりした赤い湿疹が特徴です。はじめは頭皮にできることが多く、全身にできますが、肘や膝、膝の裏などに好発します。湿疹には盛り上がりがあり、白い皮膚片が付着して、それはいずれ鱗のように剥がれ落ちます。
・関節症性乾癬・・・皮膚症状のほかに、関節の痛みや変形が起こります。症状は進行性ではありませんが、重度の場合は関節の骨が破壊され、強い変形や傷みが全身の関節に起こります。
・膿疱性乾癬・・・尋常性乾癬が乾燥した症状なのに対し、膿疱性乾癬ではジュクジュクした赤みのある部分や、膿疱などの皮膚症状があります。発熱や関節の痛みなども併発するため、入院による治療が必要になる場合も多く見られます。
・乾癬性紅皮症・・・尋常性乾癬の症状が悪化し、赤い部分が全身のほとんどを占める状態のを感染性紅皮症と呼びます。
・急性滴状乾癬・・・副鼻腔炎や扁桃腺炎などの感染症をきっかけに起こる急性の乾癬症状です。
乾癬患者の内、9割は尋常性乾癬の症状に当てはまります。
これらの症状を持つ乾癬患者の内、半数にはかゆみがありますが、アトピーのような強烈なものではありません。
これらのいずれの症状も人にうつるものではないため、他者との共同生活もこれまで通り送ることができます。
症状には顕著な特徴があるため、多くが視診によって診断を下されることになります。
乾癬の原因とは
乾癬はアトピーなどと同じ自己免疫疾患だという風に考えられています。
自己免疫疾患とは、本来体に悪影響を及ぼす分子に対して攻撃を仕掛けるはずの免疫細胞が、問題のない自分の細胞などに攻撃を始める疾患のこと。
アレルギーやアトピーなどもこの自己免疫疾患のひとつで、原因を1つに絞ることは難しく、様々な要因によって引き起こされます。
これまでに考えられてきた要因は
・ストレス
・内臓疾患
・代謝異常
・遺伝
・食事
・感染症
などです。
そのどれか一つに当てはまれば発症するということではなく、それらが複雑に組み合わさって起こる症状と言えるでしょう。
日本人より欧米人の方が発症率が高く、最近になって日本人の発症率が上がってきていることから、遺伝よりも食の欧米化が強い誘因となっていることも指摘されています。
乾癬の治療法と日常気を付けたい事柄
アトピーやアレルギーと同じく、乾癬は難治性の疾患です。
突然起こって突然治ることもありますが、それは症状として表面化していないだけであり、体質として持っているものである可能性が高いため、何らかのきっかけでまた突然治ったり再発したりということが考えられます。
ここでは皮膚医学的な治療法と、日常生活で気を付けたい事柄についてお話しします。
乾癬の皮膚科治療
乾癬は慢性化する皮膚病です。
そのため基本的には「付き合っていく」治療が施されます。
現在の一般的な治療法は以下の通りです。
・ステロイド外用剤塗布治療
・活性型ビタミンD3錠内服治療
・長波長紫外線照射治療
・DHA・EPA錠内服治療
・チガソン内服治療
・ネオーラル内服治療
ステロイドは乾癬を引き起こしている原因である免疫反応を抑制します。
免疫反応を抑えることによって乾癬の症状自体は治まるものの、本来免疫の働きによって防がれるはずだった外的刺激が容易に体内に侵入することができるようになるなど、ステロイドには数々の副反応問題があります。
ただ、一時的な症状の悪化をステロイドほど迅速かつ強力に止める外用薬は他にないのが現状です。
活性型ビタミンD3と長波長紫外線照射は実は同じ治療で、ビタミンD3には乾癬の患部で起こっている異常な速さのターンオーバーを調整する働きがあり、そのビタミンD3を含むビタミンDを生成するために必要なのが紫外線なのです。
またDHA・EPAを含む錠剤によって緩やかにではあるものの乾癬の症状が改善します。
日本アレルギー学会の発表によると、これはDHA・EPAに含まれる不飽和脂肪酸の効果によるものだとされています。
内服治療としてはビタミンA誘導体チガソン、免疫抑制剤ネオーラルによる治療が一般的です。
どちらも副作用の懸念が強く、重症乾癬の場合に適用されます。
さらに、2010年ごろから、乾癬への注射治療が保険適用になり、現在では日本皮膚科学会が認可した大病院で、最新の注射による乾癬の治療が行われています。
注射による治療の利点は、これまでの免疫抑制治療とは一線を画し、乾癬を引き起こす免疫因子(TNF-α、IL-23、IL-17)だけを抑制することが可能になっています。
そのため正常に働いている免疫反応を阻害することなく治療を続けることができ、副反応などの懸念も抑えられます。
ただ、クリニックや医院などの小さな皮膚科ではまだ注射治療を受けることができないため、短ければ2週間、長くても2ヶ月というスパンで大病院に認定を受けた大病院に通うことが必要なため、仕事を持つ人にはかえってストレスとなる可能性も否定できません。
とは言え乾癬の治療法はここ数年で劇的に進化・改善していて、2017年現在も、認可を待つ新薬が次々と現れています。
これから先数年という短い単位で、患者の負担が劇的に改善される可能性は高いと言えます。
乾癬患者が気を付けたい日常生活でのポイント
先の項目でも述べた通り、乾癬は食の欧米化により加速しているという指摘が多い疾患です。
それは、日本人が飽和脂肪酸の多い肉食を好み、不飽和脂肪酸を多く含む青魚を中心とした食生活から離れているということからも容易に想像できます。
また、脂肪過多の食事は避けるようにしましょう。
肉類を中心とした食生活をいきなり魚中心の生活にするのは労力と経済力が必要になりますが、揚げ物より蒸したり煮たりを中心とした食生活に換えるのは、むしろ調理が容易になるはずです。
現在筋トレダイエットブームの流れで、より「肉中心」「タンパク中心」の生活を送る人が増えていると思いますが、最も使われる三大栄養素と言われるたんぱく質も、取りすぎると当然悪影響になります。
食事はよく言われる「昔ながらの昭和の和食」が乾癬の症状を和らげるベストな食事の姿です。
乾癬は体の中の問題が強く影響する病気ですが、ケガをした部分や皮膚の弱った部分に好発します。
ケガやかき壊しなどによって悪化しますので、かゆいときは冷やしたり、かゆみ止めを使うようにしましょう。
感染症の早期治療も大切です。
副鼻腔炎や風邪などウイルスが体の中に入ると、免疫反応は活発化するため、乾癬も悪化します。
炎症が慢性化している場合、悪化し続けている乾癬を「これが平常の状態だ」と思い込んでしまっていることも考えられますので、体のどこかに炎症がある場合は医師の診断と加療が必要です。
最後に、乾癬の大きな要因の一つに、ストレスが挙げられます。
雲をつかむような存在であり、ある程度仕方なかったり、自分では気づかないということもあるため軽視されがちですが、ストレスは様々な疾患を引き起こすスイッチとして、確実に有力な原因です。
旅行や気分転換などで生じるポジティブなストレスは最低限必要とされていますが、頭を悩ませるようなネガティブなストレスは、できるだけ引きずらず、リセットできるように心がけましょう。