日焼けをしたり風邪をひいたり、日常のふとしたことで弱ってしまう肌のバリア機能。
本来肌内部に外的刺激が入らないように、ダメージの盾となっているバリア機能が弱ると、時としてひどい感染性皮膚炎が起こる場合があります。
皮膚が弱っているときに起こりがちな感染症にはどのようなものがあるのか、その種類と治療法についてお話しします。
肌バリアが低下しているときに起こりがちな皮膚感染症
強力な界面活性剤の使用や紫外線にさらされるなどの直接的なダメージだけではなく、体調不良やアレルギーによる炎症などによっても陥りがちな肌バリア機能の低下。
その症状は主に
・ターンオーバー異常
・常在菌バランスの崩れ
・角質層の乾燥・保水力低下
などですが、このように肌バリアそれぞれの機能が低下して、まだ生きている細胞がむき出しに近い状態になると、そこに菌やウィルスが付着しやすくなります。
付着した菌は小さな傷から体内に侵入しようとして、免疫反応を引き起こします。
これが細菌もしくはウィルス感染による皮膚炎です。
ここでは主な感染性皮膚炎の症状や対処法について詳細をお話しします。
アクネ菌感染・・・ニキビ
皮膚の常在菌バランスが崩れがちになると、すぐに出始めるのがニキビです。
皮脂をエサとするニキビの原因アクネ菌は、酸素を嫌うこともあり、毛穴の奥に住んでいます。
本来アクネ菌は善玉菌と呼ばれ、悪玉菌である黄色ブドウ球菌と相対する菌ですが、増殖しすぎると皮膚に刺激を与え始めます。
それに対抗するために免疫反応が働いた状態がニキビです。
ニキビへの対処法は、皮膚科では抗菌剤を処方されることが多いと思います。
ただ、ニキビ治療は皮膚科でも即効性・確実性の高い「これ」という治療がありません。
よく処方されるディフェリンはターンオーバーを促進して皮脂を抑える薬ですが、ターンオーバーは早まると皮膚が未熟な状態で失活することになります。
皮がむけたり、ひどい場合は角質層がなくなるなど、より肌にとって深刻な状態を招く可能性が高い薬で、敏感肌の人にはお勧めできません。
同じくよく処方されるダラシンは、抗炎症作用のある抗菌剤です。
即効性があり、現在ある炎症は抑えてくれますが、常在菌が著しく減少するため、今度は黄色ブドウ球菌による感染などを招く可能性があります。
肌全体の状況が良くない場合は、ダラシンで炎症を押さえたら、早めに使用を中断して、こまめに脂取り紙やティッシュで皮脂のケアをしましょう。
黄色ブドウ球菌・溶連菌感染・・・とびひ
普段は表皮ブドウ球菌やアクネ菌などの存在によってその数が抑えられている常在菌、黄色ブドウ球菌や溶連菌も、肌バリアが弱っていたり免疫が低下しているときに、傷ついた肌から侵入して爆発的に増える菌です。
飛び火という名前通り肌のあちこちに飛び火して、接触した人にも同じ症状が出ることがあります。
症状としては赤くジュクジュクした水泡や膿疱が全身に広がります。
夏の時期には汗疹から発症することが多く、子供特有の症状のようなイメージがありますが、敏感肌の人は感染しやすい土壌を持っているため注意が必要です。
治療はスキンケアや抗生物質入り軟膏だけでは非常に治りが遅いため、塗り薬と内服薬を併用した治療になることが多く見られます。
塗り薬だけで治そうとすると長引き、大人の場合は跡が残ることもあるので、必ず医師の診察を受けて、よく相談して治療法を決めてください。
単純ヘルペスウイルス1型感染・・・口唇ヘルペス
風邪でよく鼻をかんだときや、乾燥がひどく、口の周りに粉を吹くなど、肌バリアが明らかに壊れた状態の部分に好発し、免疫が低下している風邪の前などによく発症するため、「熱の花」と呼ばれることもあるのが口唇ヘルペスです。
その名の通り口唇付近、主に左右の口角あたりにまず赤みと違和感が現れ、間もなく小さな水泡が赤くなった皮膚の中にたくさん現れます。
ヘルペスの原因となる1型単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内の神経内部に潜伏し、免疫がある人はそのまま抑え込んでおくことができますが、その免疫の状態が悪化すると抑えがきかなくなり、発症します。
主に口の周りや目の周り、鼻の穴の入り口など、粘膜付近や皮膚の薄い部分に発症するため、痛みなどの違和感や見た目の問題が大きい皮膚炎です。
治療には主に外用薬を使用します。
処方薬、市販薬共にアシクロビルという抗ウィルス剤による治療になります。
ヘルペスの治療は対応の速さがカギとなります。
始めて発症する人にとってはわかりにくいと思いますが、ヘルペスには独特の予兆ともいえる感覚があるので、それを感じればすぐにでも外用薬を塗り始めることで、早期に抑え込むことができます。
ヘルペスの症状が悪化し、広がったり痛みが増す場合は、ゾビラックスやバルトレックスといった内服薬もありますが、効果はてきめんというほどではなく、高価な薬でもあるため、できるだけ自分で早期に気付いて悪化を防ぎましょう。