インターネットには色んな情報が落ちています。
敏感肌の悩みはとても多くの人が抱えているので、その分化粧品に関する情報も色んな人が発信しています。
そんな情報の中にも様々な種類があって、例えば「敏感肌なら界面活性剤は使うべきではない」という主張もあれば、「普段飲んでいるお茶にも界面活性剤は含まれているから、界面活性剤末すべてが危険なわけではない」という主張もあり、中には見当違いなものも含まれています。
その中のひとつが、中和などの反応を見越した処方での「劇薬」についてです。
成分表示上、劇薬が配合されているように見えるものをピックアップしてお伝えします。
【目次】
せっけんに欠かせない成分「水酸化Na」
肌に優しいアルカリ洗浄剤の代表とも言えるのがせっけんです。
このせっけん、一部の情報では、劇薬が含まれているので危険、ということになっています。
ここで言われている劇薬というのが、水酸化ナトリウム(水酸化Na、苛性ソーダ)です。
せっけんは油脂と水酸化ナトリウムを反応させて作られます。
この水酸化ナトリウムは、強力なアルカリ剤で、皮膚に触れるとタンパク質を溶かしてしまう劇薬です。
ところがこれは、高級脂肪酸(せっけんの原料となる油脂)と反応させることによって、せっけんと水の混合物に、油脂と反応させることによってせっけんとグリセリンの混合物に変化(ケン化)するのです。
この時点で、わずかにアルカリ性(洗浄力)を残した安全性の高い物質に変わっているため、原料に劇薬を使っているからと言って、肌に有害であるということはありません。
「水酸化K」由来ののせっけんは水酸化Na由来のせっけんよりも安全?
また、水酸化ナトリウムは肌に対して危険なので、水酸化カリウム(水酸化K、苛性カリ)を使用したせっけんを選びましょう、という主張をする情報もありますが、水酸化カリウムも原料時点では水酸化ナトリウムと同じ強力なアルカリ剤で、同じように中和によってほぼ無害化されます。
では、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムにどのような違いがあるかというと、せっけんの形状です。
水酸化ナトリウムが中和されたもの(せっけん素地)は固形のナトリウムせっけんとなり、水酸化カリウムが中和されたもの(カリせっけん素地)はボディソープなどの液状せっけんになります。
また、何度か登場した「ほぼ無害化」の「ほぼ」が気になる人もいるかもしれませんが、この「ほぼ」はわずかに残るアルカリ性のことで、せっけんはこの性質を利用して、肌に滞った角質汚れ(垢)や皮脂汚れを洗浄しているのです。
水酸化Kを使用したクレンジングの全成分表示
ごく単純で一般的なクレンジングの全成分の例を作ると
水
(カプリル酸/カプリン酸)PEG-6グリセリズ
DPG
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル
BG
カルボマー
アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー
水酸化K
ポリアミノプロピルビグアニド
このようになり、一見劇薬(水酸化K)が含まれているように見えますが、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル、カルボマーやアクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマーが含まれているため、完全に中和され、無害化されています。
強アルカリ剤を中和する成分
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの成分は、せっけん以外の化粧品にも配合されているのを見かけることがあると思います。
だからと言って、劇薬がそのまま含まれている可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
強力なアルカリ剤を中和する成分は、高級脂肪酸や油脂の他にもあります。
それが、化粧品の成分表示でもよく見かけるカルボマーや(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマーなどのアクリル酸系増粘剤です。
これらの成分は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを反応させることによってポリマー本来の粘り、とろみをはっきすることができるのです。
強力なアルカリ性は、この時点で中和されてしまいます。
中和前の成分名が表示されることのある化粧品成分
水酸化ナトリウムのように、組み合わせれば中和されて別の成分となる配合になっている化粧品の場合、成分表示は元の成分を表示しても、最終反応生成物の名称を表示してもいいことになっています。
例えば水酸化ナトリウムとヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルは、そのまま成分名として表示しても、せっけん素地と表示してもどちらでも構いません。
例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸という2つの高級脂肪酸と水酸化カリウムを、そのまま表示すると「パルミチン酸、ミリスチン酸、水酸化カリウム」となりますが、反応後の生成物を1つづつ表示すると「パルミチン酸K、ミリスチン酸K」となります。
さらに、このふたつの生成物をひとまとめにして「カリせっけん素地」と表記することも可能です。
強アルカリ剤だけではなく、「肌につけて大丈夫?」と思うような成分名を見つけたら、「二度と使わない!」と避ける前に、中和反応が起こらないか調べてみるのも肌への思いやりです。