オーガニックコスメやナチュラルコスメの中でも石油系成分を含まない「天然成分100%」の商品は、近年とても人気が高くなっています。
ところが、一見全く石油系成分を含んでいないように見える天然100%コスメの中にも、隠れ石油成分が含まれていることがあるのをご存知でしょうか。
成分表示にも表れることのない石油系成分の残骸である「キャリーオーバー」についてお話しします。
キャリーオーバー成分とは
現在の化粧品表示は、2001年の薬事法改正以降、医薬部外品にも化粧品にも「全成分」表示が義務付けられています。
ところが、この場合の「全成分」が実際には全成分ではないことをご存知でしょうか。
化粧品などに含まれる成分は、原則としてすべての成分を表示しなければいけない決まりになっていますが、実は含まれる成分に、効果が認められるだけの配合量に満たない場合は表示しなくても良いという抜け道があるのです。
例えばある成分は1mgで抗菌作用を発揮するということが認められている場合、0.99mg配合する分には成分表示をしなくても構わないという決まりです。
このように隠れた成分のことを「キャリーオーバー」と呼びます。
コスメ業界では特に、ある成分を抽出する際に使われた石油系有機溶媒が残っている状態のことを指すことが多く、天然100%の化粧品でも「キャリーオーバーに石油系を使っていたら一緒だ」という言われ方をします。
逆に、キャリーオーバーを含む原料の一切に石油系成分を配合しない化粧品のことを「ノンキャリーオーバーコスメ」と呼びます。
オーガニックコスメやナチュラルコスメの中には、ノンキャリーオーバーであることを宣言しているものも少なくありません。
石油系成分を避けて天然100%のコスメを選び、全成分をチェックして大丈夫だと思ったのに、実は効果が認められるだけの配合量に満たない石油系成分が山ほど残っていたら、騙されたと思う気持ちも当然でしょう。
キャリーオーバー成分の問題点
オーガニックや石油系成分と言うことにあまり頓着しない人にとっては「そこまでストイックにしなくても・・・」と思うかもしれませんが、実はそういう人にも無関係ではない問題がキャリーオーバーには潜んでいます。
医薬品や医薬部外品は別として、化粧品は厚労省に特に禁じられたもの以外のどんな成分を使って作っても構わないことになっています。
そこに厚労省や薬事法のチェックは基本的に入りません。
つまり、敏感肌の人が絶対に避けたい強力な界面活性剤などが含まれることもあり得ます。
化粧品メーカーは、よほどの大手でない限り、ほぼすべての原料を他社から仕入れています。
とても原料にこだわっているメーカーの場合、あちこちの原料メーカーを回って良い原料を集め、製造業者にゆだねて化粧品を作ります。
特にこだわりのないメーカーの場合、はじめから製造業者に企画書を渡して丸投げと言うこともあります。
前者の場合、原料の段階で、石油系成分が使われているいないをメーカーが把握することができますが、後者の場合できない・・・と言うよりしない場合が多いでしょう。
そうして製造業者の手元わたった原料の時点で、原料Aに0.99mgの抗菌剤、原料Bに同じく0.4mgの抗菌剤、原料Cにも0.7mg・・・というふうにキャリーオーバー成分が集まったとします。
でも、キャリーオーバー成分に表示義務はないので、減量メーカーに確認を取るまではどれだけのキャリーオーバーが含まれているのか、製造業者にもわからないのです。
出来上がった製品には、都合1mg以上の抗菌剤が含まれているにも関わらず、その化粧品は「抗菌剤無添加」として売り出すことさえできるのです。
防腐剤無添加は真っ先に疑ってOK
化粧品を作る上で、防腐剤無添加というのはほぼ不可能です。
できないことはないですが、ごく少量の化粧品を高額で購入し、1週間以内に使い切らなければいけないという事態になります。
防腐剤を使うことによって危惧される肌への刺激より、化粧品の品質が落ちることによって肌に刺激となる可能性の方がずっと高いということです。
天然の防腐剤としてよく使われるのが、フェノキシエタノールです。
お茶などにも含まれる成分なので、天然100%のコスメに使われていることもあります。
水は腐るため、水分の多い化粧品ほど防腐剤の存在は不可欠です。
そのため、成分表示の上位に水が含まれている化粧品が「防腐剤無添加」をうたっている場合、必ず何らかのキャリーオーバー成分が含まれていると考えた方が良いでしょう。
フェノキシエタノールは植物由来で刺激が少ない成分ですが、敏感肌の場合、一時的にヒリつきを感じる場合もあるでしょう。
ただ、実際には全成分表示にフェノキシエタノールが記載されている化粧品の方が、防腐剤無添加をうたう化粧品より肌に優しいということがあり得ます。
最近ではキャリーオ-バーまで自主表示しているメーカーも出てきています。
無添加化粧品も信用ならないな・・・と感じてしまう時は、このようにキャリーオーバーまで開示している化粧品を選ぶと良いでしょう。