コスメの基礎知識

まとめサイトで話題のヒルドイドは本当にベストな選択なの?

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数年前からキュレーションサイトやSNSで話題になり始め、「アンチエイジングならこれ!」とまで言われている医薬品、ヒルドイド。

保険が利くため値段も安く、乾燥肌からニキビ薬の副作用による乾燥防止などにも比較的安易に処方されることから、一部では化粧品軟化使わずにヒルドイドでアンチエイジングしようと考える人が増えています。

 

最近では情報をSNSから得る若い層だけでなく、40代、50代の肌悩みが深刻化し始める世代の方からも「ヒルドイドって、実際どうなの?本当に良いなら皮膚科でもらおうと思って・・・」という声を聞くようになってきました。

ここでは、化粧品開発者や医薬品開発、薬剤師などを取材した美容家の視点から、ヒルドイドが美容面でどのような効果を持つのかを考えてみたいと思います。

 

ヒルドイドとは

ここ数年で一気に知名度を上げた保湿効果のある医薬品がヒルドイドです。

乳液状のヒルドイドローション、油分の多いクリームタイプのヒルドイドソフト、軟膏タイプのヒルドイドクリーム、ゲルタイプのヒルドイドゲルの4種類があります。

薬効成分は、血液中に存在する血行促進・保湿効果のある物質ヘパリンに似た、ヘパリン類似物質です。

医薬品として処方されるヒルドイドローション、ソフト、クリーム、ゲルはいずれも、薬効成分ヘパリン類似物質を0.3%含んでいます。

 

このヘパリン類似物質の中には、水と結びつきやすい親水基という性質を持つ構造があるため、水分を引き寄せやすくなっています。

また、抗炎症作用や血流改善作用があるため、炎症を起こしがちな敏感肌の改善に対して処方されることも多い医薬品なのです。

 

ヒルドイドは本当に「どんな美容液よりも良い」の?

いつの頃からか、ニベアに替わってSNSやキュレーションサイトで話題になり始めたヒルドイド。

その直前に話題になっていたニベアのことを考えても、安価に手に入るため急激に拡散したことがうかがえますが、結論から言えば、ヒルドイドは「単なる保湿剤」にすぎません。

 

そして、その効果も一般化粧品に含まれているヒアルロン酸やコラーゲンに勝るものではないのです。

一部では、ヘパリンより低分子のため、肌の奥まで届くという主張がありますが、ヘパリン類似物質より低分子のコラーゲンやナノ化された保湿成分は化粧品成分の中にもたくさんあります。

 

また、ヘパリン類似物質も含め、そうした保湿成分のほとんどは、肌表面の水分を蒸発しないように保持しているだけで、肌自体の水分が増えるわけではありません。

角質層の水分や油分自体を増やして保湿・保水するなら、NMFやセラミドなどの成分の方が効果があるでしょう。

 

そう考えると、ヒルドイドに含まれる成分に、医薬品成分であるヘパリン類似物質以外の美容成分はどれくらいあるのかが、一般的な化粧品との違いになります。

ヒルドイドに含まれる添加物と、一般的な化粧品や医薬部外品の成分にはどのような違いがあるのか見てみましょう。

 

ヒルドイドローションに含まれる添加物

ヒルドイドはすべての製品で、医薬品有効成分であるヘパリン類似物質が0.3%配合されています。

ヘパリン類似物質の働きは、一般的な保湿効果、抗炎症、血行促進効果ですから、「究極の美容クリーム」と言われるゆえんがあるとすれば、そのほかの添加物の部分に普通の化粧品や医薬部外品とは違う点があるはずです。

それでは、ヒルドイドローションの添加物について詳しく見てみましょう。

 

ヒルドイドローションの添加物

 

ヒルドイドローションに含まれる添加物は以下の通りです。

  • グリセリン・・・親水性を持つアルコール。保存料としての働きも併せ持つ。
  • 白色ワセリン・・・石油系油脂。
  • スクワラン・・・人間の体内にもともと存在する脂質。
  • セタノール・・・増粘剤・発光剤・安定剤などとして配合される。旧表示指定成分。
  • 還元ラノリン・・・動物由来油脂であるラノリンに水素を添加した界面活性剤。旧表示指定成分。
  • セトマクロゴール1000・・・ポリエチレングリコール。PEG-20。水溶性の保湿剤。
  • モノステアリン酸グリセリン・・・ステアリン酸グリセリル。界面活性剤として配合される。
  • パラオキシ安息香酸エチル・・・エチルパラベン。旧表示指定成分。
  • パラオキシ安息香酸プロピル・・・プロピルパラベン。旧表示指定成分。
  • カルボキシビニルポリマー・・・水溶性増粘剤。化粧品成分としてはカルボマーと表記されることが多い。
  • ジイソプロパノールアミン・・・pH調整剤。旧表示指定成分。

 

ひとつひとつの添加物を詳しく見ても、ヒルドイドローションに医薬部外品や化粧品以上の美容成分が含まれているということは考えにくいことがわかります。

肌に刺激を与える可能性が一般的な成分よりも高い旧表示指定成分が全成分の半分近くを占めていることも気になります。

 

ヒルドイドは単純に安いから支持されている

特に美容効果に優れた添加物が含まれているわけでもなく、むしろ肌への刺激が気になる成分が多いヒルドイドがここまで支持されるのは、間違いなく「保険が利く」という金額的な問題があるでしょう。

医師の処方により、保険が適応されると、ヒルドイドは300円程度で手に入れることができます。

 

ところが同量、同程度の金額で買えるニベアと比較すると、ヒルドイドは特別安いわけではないことがわかります。

ニベアの全成分は以下の通りです。

ミネラルオイル

ワセリン

グリセリン

水添ポリイソブテン

シクロメチコン

マイクロクリスタリンワックス

ラノリンアルコール

パラフィン

スクワラン

ホホバ油

オレイン酸デシル

オクチルドデカノール

ジステアリン酸Al

ステアリン酸Mg

硫酸Mg

クエン酸

安息香酸Na

香料

 

この中で、旧表示指定成分にあたるのは安息香酸Naのみ。

保湿成分はむしろヒルドイドよりもたくさん入っていて、保険適用後の価格より安価です。

つまり、安い保湿剤がほしいという理由で買うなら、ニベアの方が1枚上ということになります。

 

また、一番の問題は、ヒルドイドが医薬品であるというところにあります。

保険が利くということは、美容目的に購入されるヒルドイドの価格の7割が、税金で賄われているということです。

一部では、ヒルドイドを保険適用外にするという動きも出てきています。

ヒルドイドは、医師の処方がなくとも薬局で薬剤師の指導によって購入できる医薬品です。

本当にヒルドイドの効果を信じ、自分の肌に合うから美容目的で続けたいという人は、保険適用でなく、自費で購入するようにしましょう。

 

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