敏感肌の基礎知識

経皮毒の危険性と真偽・・・成分が肌から浸透するって本当?

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皆さんは「経皮毒」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

敏感肌の人にとって、他人事ではない危険性に関する言葉です。

 

経皮毒とは、化粧品やシャンプーなど、外からのケアによって、肌から刺激のある物質が吸収され、体内に蓄積されたり、分解されずにアレルギーを起こすという考え方です。

 

真偽のほども確実ではないこの経皮毒について、中立の立場で肌への危険性を考えてみましょう。

 

経皮毒とは

薬学博士、稲津教久などが提唱する、皮膚外からの要因による体内への悪影響のこと。
外用薬などと同じように、皮膚を介してスキンケア成分などが体内に侵入し、蓄積されるという理論です。

 

つまり、毎日のスキンケアに使用している成分が、食物に含まれる農薬などの影響と同じように体に問題を引き起こすことがあるということです。

 

この経皮毒には科学的にも賛否両論があります。
経費吸収される医薬品が存在し、臨床において結果を得ることができていることからも、良い成分だけが肌から吸収されると考える方が不自然であるという意見、そして肌は排出器官であるため、一般化粧品レベルの成分が簡単に皮下まで侵入するとは考えにくいという考え方です。

 

どちらの言い分にも一理あり、中立的に見ると、「全くありえない飛んでも理論とは言えない」ということになります。

ただ、ネットで流布されている経皮毒の根拠については非常にデマが多いのも事実です。
経皮毒について、まことしやかに語られている事実に反する事柄についてお話しします。

 

経皮吸収された成分は10日で10%しか排出されない

この数字、または理論に対する根拠は全くありません。
それというのも、この考え方は全くのでたらめではなく、医薬品の「TTS」を参考にした考え方だからです。

 

TTSとは、経費吸収型製剤のことで、ポピュラーなものではニコチンパッドなどがあります。
このTTSの特徴は、身体のどこか一部に貼ることによって血流に乗り、全身に効果を発揮することができるというもので、経皮毒の考え方と非常によく似通っています。

 

このTTSは、内服薬が肝臓を経由して、いったんろ過されるのに対し、はじめから血流に乗っているため、ろ過を受けずに全身をめぐることができます。
このことによって、本来は肝臓で分解され、排出されるはずの有効成分を全身に届けることができるのです。

 

「肝臓を通過せずに済む」ということが、どのような成分も分解されにくく、排出されにくいという曲解や拡大解釈を生んだと考えられます。

 

ただ、このTTSにはとても高度な技術が使われていて、特定の成分でしか実用化されていません。

もし、日用品レベルの成分が経費吸収されてしまうのであれば、医療現場ではもっと多くの医薬品がTTS化されていてもおかしくないはずです。

 

そう考えると、「シャンプーが肌から侵入して子宮に溜まる」という理論には疑問が生じます。

 

皮膚バリアが破壊されると、表皮細胞をすり抜けて化学物質が体内へと侵入する?

皆さんは「※角層まで」という表記に見覚えはないでしょうか。

これは化粧品の効果についてのコピーによくつけられている注釈です。

 

その意味は、「化粧品が浸透するのは角層(角質層)までです」というものです。

実際に肌の多くの問題は肌バリアである角質層に起こっているため、成分が角質層まで浸透すれば、化粧品の効果を実感することはできます。

 

厚生労働省によって、化粧品の効果をうたうことができるのは角質層までと決められていて、表皮より奥に何らかの影響があるという言い方はできないことになっているのです。

 

ところが、これは化粧品の実態とは少し違っています。

肌は身体の防御器官で、外からの侵入に対し、通常では3重の関門があります。

第一の関門が角質層、第二の関門が表皮、最後に真皮が待っています。

 

意図的に細胞の隙間より小さくした成分でなければ、その関門をすべて突破することは、ほとんど不可能です。

しかし、化粧品の中には、理論上明らかに角質層よりも奥の表皮に影響を及ぼすものが存在するのです。

それが「ナノ化成分」です。

 

高度な技術によって自然界には存在しない超微粒子、低分子化された化粧品成分は、細胞の隙間に入り込んで、表皮や真皮に影響を与えることがあります。

その成分が、皮下にまで浸透し、体内に侵入する可能性に対して、現在確実な否定はされていません。

 

身体にとって有害な成分を、わざわざ高度な技術によってナノ化することは考えられませんが、万が一、ナノ化された成分が身体に有害な成分であった場合、経皮毒の考え方に似た状況が起こることは十分に考えられるでしょう。

 

経皮毒は本当に心配すべきこと?

現在起こっている肌や体の不調に対して、絶対の答えがあると安心しますよね。

その心理が経皮毒という理論に説得力を持たせているという部分はあるのではないでしょうか。

 

ナノ化やTTSなど、自然には考えられない高い技術が存在する現在、経皮毒を笑い飛ばすことはできません。

ただ、現時点では、肌から成分を体内に侵入させるためには最先端ともいえる高い技術が必要なので、無意識に毒を貯めてしまうということは、考えにくいと言えるでしょう。

 

経皮毒を過剰に怖がる必要はありませんが、自然界にないものは、自然のたまものであるわたしたちの体にどのような影響を与えるかはわかりません。

現代病とも言える敏感肌の人は特に、肌につける成分をしっかりと見極めることが大切です。

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